同級生7

高校三年の春にスキー場で関西の女の子と知り合い、文通することになった。
敏子にも報告した。写真も見せたし、手紙の内容を相談したこともあった。めぐみの話も出たが、前の彼氏と別れて違う男と半同棲している話などを聞いて萎えた。
結局、リアルな彼女ができず、「脳内経験者」のまま高校生活も終了間際のバレンタインデーの前日、一日早く関西から小包でチョコレートが届いた。
自慢をしたかったのかどうかよくわからないのだが、なぜか敏子に電話で報告した。
「ついにチョコをもらいました。それも手作り、ハート型だぞすげえだろー。」
「あっそっ、おめでと、たべすぎて鼻血ださないでね。」
「おまえもさー、前にズット好きな奴がいるって言ってたじゃん。明日渡すのか?想像つかねえけど。」
「よけいなお世話だよ。」
「勇気出してみろよー、なんなら、俺が手伝ってやろうか?」
「ホントに?」
「いいよ。」
「じゃあ、明日の夜、『ベル』に来てよ。約束だよ。じゃあね。」
電話を切った。『ベル』は今時さっぱり見かけなくなった純喫茶。敏子とも何度か行ったことのあるお店。マスターと学生バイトのアキオさんと二人でやってる。
敏子には何度か聞かされていた「ベルのアキオさんカッコイイ!」って、めぐみといい、敏子といい、どうして年上の男に惹かれるのか、なんだか複雑な感情。
(どうせうまくいくわけない)いや、本心は(ふられろ!)とちょっとだけジェラシー?
翌日、彼女のいない楽しい仲間といつもの雀荘で打っていたら、すっかり遅れて『ベル』に到着。
敏子もアキオさんもいなかった。マスターに訊いたら、アキオさんはスキー合宿で3日前から野沢温泉だそうで、敏子は一時間以上前に帰ったとの事。
(敏子の奴、渡せず終いか、チョット可哀想だな。)と思った瞬間。
「ダックちゃん、コレ、敏子ちゃんから。」
マスターにチョコレートの包みを渡された。
「俺がもらうわけにはいかないでしょ。アキオさんが帰ってきたら渡してやってくださいよ。」
と返そうとしたら、
「いやいや、これはダックちゃんに渡してくれって、ほら手紙も付いてるでしょ。」
とりあえず、一番奥の席に座りココアを注文して手紙の封を開けた。