失踪2

ダック父は中卒でしたが、20歳で独立して会社を作りコツコツと実績を積み上げてきた根は真面目でユーモアのある社長さんでした。
なまじっか、いくつか土地を所有していたものですからバブル期に銀行さんから過剰ともいえる融資を受けて業務拡大、設備投資をしていきました。頑張ってきた自分へのご褒美に葉山に別荘地も買っちゃったんです。
私はと言えば、なんの苦労もせず大学を卒業して「自分の力を試してみたい。」などと生意気なことをほざきまして、趣味の延長で始めた仕事が時代の波に乗り、お財布もそこそこ潤いました。完全に世の中をナメておりました。「今日も楽しかったケド、明日はもっと楽しいにキマッテルジャン!」そんな時代です。
そんな時に父親からそろそろ跡を継げと誘われ、のこのこと実家に舞い戻ったわけであります。
ちなみにダックの兄貴は国立の大学を卒業して大手ゼネコンで出世街道ばく進中でした。
時代が時代だったので、こんな世間知らずのアホ息子でもちょっと頑張れば割と成果をあげたりして、小さな会社ですがすぐさま常務取締役に就任。
それと同時期にお付き合いしていた彼女がオメデタくオメデタになりゴールイン!
将来は社長夫人となるべくダック嫁の誕生であります。
盛大な結婚式、2次会パーティ、新婚旅行はワイハですよ、マウイ島リゾート。
賃貸でしたが、新築の3DKのマンションに新居を構え、買い物用に新車なんぞを購入しまして、この世の春を満喫しておりました。
土地を担保にいくらでもお金を貸してくれますので、生まれてくる子供のために家でも買おうかなー?なんて週末にはモデルルームを見に行ったり、夢はふくらむばかりです。
「必ず成功する。」なにしろ自信がありました。マーフィーもカーネギーも読みましたし、なんてったって大銀行さまがパートナーですからね。
でもね、夢はそんなに長続きしませんよね。そのかわりにちゃんと悪夢が待っていましたよ。
               続く